本記事は、「令和8年 2月期午前 第一級陸上特殊無線技士 工学 過去問解説 問6~問10」の解説になります。
過去問解説一覧はこちら。

問6

解答
3
解説
1 正しい
同軸ケーブルのように「中心導体」と「外側導体」の2つの独立した導体を持つ伝送線路では、電界と磁界がどちらも進行方向に対して垂直な成分のみを持つTEM(Transverse Electromagnetic)モードが基本モード(最も低い周波数から伝送できるモード)として伝送されます。
2 正しい
同軸ケーブルは直流($0\text{ Hz}$)に近い低い周波数から使用できますが、周波数が高くなりすぎると、TEMモード以外の高次モード(TEモードやTMモード)が発生してしまい、信号が正常に伝送できなくなります(これを高次モードの遮断周波数と呼びます)。そのため、高周波側には使用限界(制限)があります。
3 誤り
導体損:周波数が高くなると「表皮効果」によって電流が導体の表面付近しか流れなくなるため、実質的な抵抗値が上がり、損失が増加します。
誘電損:絶縁体(誘電体)の中を電界が激しく反転するため、分子の摩擦のような現象(誘電正接 による損失)が起こり、周波数に比例して損失が増加します。
4 正しい
方形導波管の内部を電磁波が進むとき、管の壁面で反射を繰り返しながらジグザグに進むため、管軸方向の進むスピード(位相速度)は光速よりも速くなります。波長は位相速度に比例するため、管内波長 は自由空間の波長 よりも必ず長くなります。※ は遮断波長
5 正しい
導波管は同軸ケーブルとは異なり、中心導体がない「ただの金属の筒」です。そのため、ある特定の周波数(遮断周波数:カットオフ周波数)より低い周波数の電磁波は、管の内部で減衰してしまい奥まで伝送することができません。この性質をハイパスフィルタに例えることもあります。
問7

解答
4
解説
帯域フィルタ(BPF:Band Pass Filter)とは、特定の周波数「帯域」だけを「通過」させ、それより低い周波数と高い周波数はどちらもカット(減衰)するフィルタのことです。
下記の条件に一致するグラフが正解のグラフです。
・低すぎる周波数をカットする(減衰量 は高い)
・狙った周波数帯 ()を通過させる(減衰量 は低い)
・高すぎる周波数: カットする(減衰量 は高い)
他の選択肢は以下のとおりです。
1:帯域除去フィルタ(BRF / BEF: Band Rejection/Elimination Filter)
特定の周波数帯だけをピンポイントでカットし、それ以外を通すフィルタです。
2:低域フィルタ(LPF: Low Pass Filter)
低い周波数を通過させ、高い周波数をカットするフィルタです。
3:高域フィルタ(HPF: High Pass Filter)
高い周波数を通過させ、低い周波数をカットするフィルタです。
問8

解答
3
解説
A
アナログ信号をデジタルに変換するとき、どれくらいの細かさ(時間間隔)でデータを切り取るべきかという決まりがあります。これを標本化定理(サンプリング定理)といいます。
定理では、「元の信号に含まれる最高周波数の2倍よりも高い周波数(サンプリング周波数)」で標本化すれば、元の信号を完全に復元できるとされています。
例えば、人間の耳に聞こえる最高周波数が約 なので、CDのサンプリング周波数はその2倍以上の に設定されています。
B
量子化とは、標本化した無段階の振幅(高さ)を、あらかじめ決めた段階(ステップ)に無理やり当てはめる作業です。
このとき、どうしても「実際の値」と「当てはめた段階の値」との間にわずかなズレ(誤差)が生じます。これが量子化雑音(量子化ノイズ)です。
階段のステップの数が多い(=細かく区切る)ほど、このズレ(誤差)は小さくなるため、量子化雑音は小さくなります。
C
受信側でデジタル信号を「復号」すると、階段状のガタガタした信号(パルス列)になります。
このガタガタした信号には、元の信号成分(低い周波数)だけでなく、カクカクした角の部分に由来する余計な高周波成分(高調波ノイズ)がたくさん含まれています。
ここから滑らかな元のアナログ信号だけを取り出すためには、余計な高周波をカットして、低い周波数だけを通す低域フィルタ(LPF:Low Pass Filter)をかける必要があります。問題文の図にある「補間フィルタ」の正体は、このLPFのことです。
問9

解答
1
解説
周囲温度 を絶対温度[K]に変換します。
なので
となります。
あとは、問題文に与えられている式に数値を代入します。
雑音指数(真数)は2だとわかったので、この値をデシベルに変換します。
問10

解答
2
解説
A
直線量子化とは、信号の大きさに依存せず、すべての範囲を「同じ等間隔のステップ(階段)」で区切る方法です。
この方法ではノイズの大きさ(量子化雑音電力 )は、入力信号 が大きくても小さくても常に一定になります。
ここで、入力信号電力 が小さい(=小さな声や小さな音の)ときを考えてみます。
ノイズ が常に同じ大きさで居座っているため、信号 が小さくなればなるほど、信号に対するノイズの割合()は相対的に大きくなってしまいます。結果として、信号対雑音比( 比)が悪化し、音がガサガサして聞こえにくくなります。
B C
小さな信号のときだけ 比が悪くなってしまうのを防ぐため、信号の大きさに合わせて工夫(非直線量子化)をします。
人間の声などは、大半が「小さな音」で、たまに「大きな音」が出ます。そこで、小さな信号に対しては細かく(ステップ幅を狭く)区切り、大きな信号に対しては大雑把に(ステップ幅を広く)区切ることで、信号の大小に関わらず 比をできるだけ一定に保ちます。
これを回路(装置)で実現するときは、以下の手順を踏みます。
① 送信側:小さな信号をあらかじめ大きく引き伸ばし、大きな信号は抑え込むという「圧縮器(コンプレッサ)」を通して、信号の強弱の幅を狭くしてから量子化します。
② 受信側:元通りの信号のバランスに戻すため、送信側とは逆の処理を行う「伸張器(エクスパンダ)」を通します。
この「圧縮」と「伸張」を組み合わせた技術は、英語の Compressor と Expander から取って 「コンパンディング(Companding)」 とも呼ばれます。

